11月7日の学習発表会の後半に行われた、この日のメインの企画である作文発表会には、懐かしい方、初めての方、近くの方、遠来の方、さまざまな方が参加して下さいました。ハルモニたちはこの日のために、自分がこれまで歩んできた人生の中のある場面を切り取り、一心に作文を書き綴りました。次世代へのメッセージが詰まったこの作文を読み上げるハルモニたちの姿に、会場のみなさんは温かい眼差しを送りながら、耳を傾けて下さいました。
最高齢94歳を筆頭に、80~90歳台が多くを占めるハルモニたちの生きてきた道は、日本の植民地時代から、太平洋戦争、朝鮮戦争、戦後の時代と、ずっと差別と貧困から免れ得ない苦難の道でした。
ハルモニたちの歩んできた歴史は、日本のいや世界の歴史に翻弄されたものであったことを、今回、作文制作、発表の過程で皆で学ぶことができたことは、大きな収穫でした。
例えば、94歳の 類順 (ユスン)さんは、終戦前に名古屋で2回の大地震に遭遇しました。私たち共同学習者は、その地震が日本政府によってずっと隠蔽されていたことを、類順さんの話をきっかけに知ることができました。またハルモニの中では少し若い世代の花子(ファジャ)さんが、長らく人には語れなかった海外への出稼ぎの苦労は、韓国が海外出稼ぎ者のもたらす外貨をあてにして国の発展を成し遂げた時期に相応していることも知りました。
またそもそも「国境をまたいで」と言っても、植民地下では朝鮮は日本であったので国境など越えたわけではないことも、共同学習者の一人、Tさんの指摘で学びました。Tさんは「桜本に通って来てハルモニたちの話を聞けば、日本のことだけでなく世界のことが学べるのです。本当にいい学びの場なんです、ここは!」と、作文発表の最後に素敵なまとめをして下さいました。
以前は、ハルモニたちはあちこちから声をかけていただき、出かけて行って「語り部活動」をしてきましたが、最近ではみなが高齢になり、それはできなくなりました。しかし今回、ハルモニたちのいつもの学びの場に、外からみなさんに来ていただき、おかげでハルモニたちがさらに高齢になっても、自らの持てるものをお伝えできることが分かりました。それを心ある人が受け止めて下さることによって、素晴らしい交流が展開できることを、私たちも実感することができました。
翌週の11月11日のウリマダンでは、学習発表会の振り返りをしました。ハルモニたちが晴れ晴れとした顔で語った感想は……
◆ 帰りに、よく話しましたね、と声をかけてくれた人があって、とても嬉しかった。
◆ 私たちの人生についての作文をあんなに熱心に聞いてくださって、私たちの書いたことが何かのお役に立つのなら、こんなに嬉しいことはありません。生きる喜びになります。
◆ 私はウリマダンでは新米です。みんなの発表を聞きながら、これからも元気で努力して、いろんなことができるようになりたいです。
ハルモニたちはこのイベントを通して、来場者から温かく受け止めてもらったことで心豊かになり、前向きに生きる元気が湧いてきたようです。高齢のハルモニたちが、これからを見据えてやっていこうとしている、その態度に周りの者が励まされています。
残念ながらコロナ感染の再拡大で、この振り返りの日を最後に、またウリマダンはお休みとなり、いつ活動が再開できるか分かりません。またハルモニたちが、来年再び同じようなことができる保証もありません。しかし今回の発表会は、たとえ状況が今より厳しくなったとしても、今いる場所から今できるやり方で、ハルモニらしい発信を続けることができること、そして社会とつながり続けることが可能なこと、それを教えてくれる会であったと思います。
今後次の機会があったなら、今回残念ながらハルモニたちと来場者が直接交流を深める場をもてなかったので、次回はそういう場を持つことができたらと思います。今回ご参加下さった方も、今回来られなかった方も、またいつかハルモニたちと言葉を交わして頂く機会がありますよう願っています。(H.S.)
(報告1、報告2 ともに、写真家の大八木宏武さんから多くの写真をご提供頂きました。ありがとうございました。)